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大型将棋の実戦譜の解説 〜摩訶大将棋・中将棋・平安大将棋の比較〜

大型将棋とは

 現代では縦9マス横9マスの将棋盤、成駒含め14種片側20枚総数40枚の駒を使って対局する将棋が一般的ですが、平安時代から鎌倉時代にかけては現代将棋よりも大きな将棋盤を使い駒の種類や数も多い将棋が存在していました。私が所属する研究室では古文書の記述に基づきルールを復刻し、そのルールの遊戯性や戦術について議論しています。今回は現時点の復刻したルールでそれぞれの将棋の棋譜の特徴を比較していきます。

摩訶大将棋

摩訶大将棋の初期盤面

 摩訶大将棋は、縦16マス横19マスの将棋盤、50種片側96枚総数192枚の駒を使って対局する将棋です。将棋盤と言えば正方形の印象があるかもしれませんが、摩訶大将棋の将棋盤は古文書の記述では縦横19マスとされていますが、摩訶大将棋の将棋盤が平安京の条坊と一致しているという説が出てきたため今回のルールでは縦16マス横19マスの将棋盤を使用しています。

 ルールについては、不成の駒(奔王、龍王、龍馬、狛犬、師子)の駒が敵陣に入り無事に出たら勝つ、持ち駒は使用しない、踊り(駒を飛び越え、相手の駒なら取ることができる)と居喰い(動かないまま相手の駒を取ることができる)と同じ動きを2回できる(1回目の動きで駒を取ったらそれ以上は動けない)という動きができる駒の存在、仲人は居喰いでのみ取ることができる。この4点が現代将棋と大きく異なる点です。

 棋譜では、8方向に走ることのできる勝利に関わる駒の奔王、居喰いをすることのできる狛犬、現代将棋の飛車の動きを2回できる鉤行や現代将棋の角行の動きを2回できる磨羯といった強力な駒が動かされることが多いです。序盤は奔王による攻めが行われその後狛犬による攻めが行われるためその攻めから守るために鉤行や磨羯といった駒が動かされる対局が多いです。

中将棋

中将棋の初期盤面

 中将棋は、縦横12マスの将棋盤、21種片側46枚総数92枚の駒を使って対局する将棋です。江戸時代に対局されたルールが現代にも引き継がれ対局されていますが、今回のルールは中世(14〜15世紀)の中将棋のルールの復刻を行い対局を行いました。

 ルールについては、摩訶大将棋のルールをそのまま引き継ぎました。これは今回の中将棋は摩訶大将棋から駒を100個取り除くと中将棋の駒数になるため、摩訶大将棋から駒の削減と成駒の変更によって中将棋が成り立ったと考えているためです。不成の駒について、象戯圖では奔王、師子、玉将の3種類ですが摩訶大将棋のルールを引き継ぐとしたため奔王、龍王、龍馬、師子の4種類となっています。

 棋譜では、8方向に走ることのできる勝利に関わる駒の奔王と居喰いをすることのできる狛犬が動かされることが多いです。

平安大将棋

平安大将棋の初期盤面

 平安大将棋は、縦9マス横13マスの将棋盤、13種片側34枚総数68枚の駒を使って対局する将棋です。二中歴では横13マスの盤面が使用されるため、将棋盤は現代将棋と同じ正方形とすると縦横13マスとなりますが自陣の歩兵と敵陣の歩兵の間隔が大きく、駒の動きも3種類しか書かれていないため遊戯性がない将棋となっていたため、歩兵の間隔を現代将棋と同じく3マスとなる縦9マス横13マスの将棋盤を使い古代大型将棋の法則に基づき駒の枚数と動きをを復刻し対局を行いました。

 ルールについては、勝利条件は現代将棋と同じく王将を詰ませると勝ちとなります。しかし、持ち駒の使用はなく、成駒も存在しません。

 古代大型将棋の法則についてですが、古代大型将棋である摩訶大将棋、大大将棋、大将棋、平安大将棋はある程度使用されている駒が一致しますが駒の枚数に法則が存在しています。摩訶大将棋は96枚の駒、大将棋は65枚の駒、平安大将棋は34枚の駒を使用します。この枚数から古代大型将棋では異なる将棋になるたびに31枚の駒がなくなっていることとなります。大大将棋は摩訶大将棋から31枚の駒を取り除き新たに31枚の駒を追加しています。また、研究室では平安大将棋の駒を2分割することでチェスと中国象棋になるのではないかと考察しています。取り除かれた駒は名前は無くなりますが駒の動きは別の駒の動きとして残され、取り除かれなかった駒は名前は残りますが動きは変わってしまうという法則に基き駒の動きを復刻しました。

 棋譜では、序盤は銀将を使った攻めが見られますが、全体を通して見ると特定の駒のみを動かすということはなく盤面全体を使った対局が多いです。

 

まとめ

 それぞれの将棋において、どの駒が攻めや守りにおいて有効なのかがわかりやすかったです。摩訶大将棋と中将棋では奔王を使った攻めが多く見ることができ自分の攻撃を通し切るような棋譜が多いのに対して平安大将棋ではより自分が優勢になるように少しづつ盤面を動かしていく棋譜が多く見られました。また、どの将棋においても走り駒といった多く動くことのできる駒が強力なのには変わりないなと思いました。

作者プロフィール

塚本 葉月

デジタルゲーム学科 計測ハードウエア研究室所属

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