大阪電気通信大学

コックピット効果を用いたVR酔いの低減効果の検証

研究概要

近年ではVRという技術はゲームなどのアミューズメントをはじめ、医療や訓練といった様々な分野にて活用されることが増えてきた。しかし、それらの利用者にはVR酔いと呼ばれる乗り物酔いと似た症状を感じてしまうことも少なくない。そこで本研究では、視界内に追従するオブジェクトを配置することで視界の基準を生み出すことでコックピット効果を発生させ、周辺視野の流れを自然な形で隠すことでVR酔いを低減させる目的で実験を行った。また、コックピット効果を発生させるためのシステムの作成、とそれを用いたVRの実験環境の構築を行った。また今回は同時に「変化の見落とし」と呼ばれる心理学的手法を用いることにした。実験中のデータは脳波および心電図による客観的評価とThe Simulator Sickness Questionnaire(SSQ)を用いた主観的評価により実験の評価と考察を行った。

研究内容

本研究ではVR酔いを低減するためにコックピット効果を利用した手法を検証する。コックピット効果とは画面内にフレームや動かない物体を設置することにより、そのオブジェクトが基準点となり視界が安定することで、VR酔いの発生する確率を下げるという手法である。また同時に併用した変化の見落としは多様な情報が渦巻くような環境条件下において、その個人にとって重要だと認識された情報のみを選択し、それに注意を向ける認知機能を指す概念である。この変化の見落としにより配置したオブジェクトに対しての違和感を減少させ、コックピット効果によってVR酔いを軽減するという目的のもとこの2つの効果を用いた。

また今回はVRゴーグルを使用した際に見える視界上に「何もなし」、「マスク」、「帽子」の3種類の条件を用意し、1人の参加者に対して3つの条件で実験を行った。今回用いたマスクと帽子の画像を下記に記す。

図1 コックピット効果発生に用いたマスクの画像
図2 コックピット効果発生に用いた帽子の画像

またコックピット効果が発生したことによるVR酔いの軽減を確かめるためのVR環境を構築した。環境は株式会社ZENRINから無料で公開されているUnityのアセット(素材の総称)である「Japanese Otaku City」を元に、5分ほどの時間をかけて自動的に移動するようなシステムを作成した。ステージとしては右下の白丸からスタートし、矢印方向に進むように作成している。

図3 作成したシステムを俯瞰した画像

また以下の動画1、2は「マスク」と「帽子」のオブジェクトを配置した際の、VRゴーグルから見える視界の映像である。今回は録画の関係上、右目の映像のみのためオブジェクトが右に片寄っている。動画1では右下に白いマスクを配置し、動画2では画面上部に黒い帽子を配置している。

動画1 マスクのオブジェクトを設置した時の視界
動画2 帽子のオブジェクトを設置した時の視界

この作成した環境を元に1人につき計3回の実験を行い、そのデータを脳波、心電図、SSQアンケートの3つから分析し、評価を行った。また今回はコックピット効果だけではなく、同時に変化の見落としの効果を調べるためにSSQアンケートに追加の質問を行っている。脳波によるデータをまとめたグラフが図4、心電図によるデータを纏めたグラフが図5、SSQアンケートによる結果をまとめたものが図6および図7である。

脳波は今回、β波と呼ばれるVR酔いが発生したときに多く出現する周波数を開始時と終了時の数値を用いて解析した。図4を見てみると「何もなし」という条件のときと比べて「マスク」を使用した場合には2.1%の差が生まれた。しかし「帽子」に関しては逆に数値が高くなってしまった。

また心拍数に関しては心拍数の値でVR酔いやストレスなどを関した際に高まるLF/HFという数値を用いて、実験開始時と終了時で解析を行った。図5を見ると「なし」に比べて「マスク」は全体的な値が高くなり、「帽子」は終了時の値が高くなってしまった。これに関してはストレスという面で視界に写ってしまった結果、数値が高まってしまったのではないかと考えた。

図4 実験前後のβ波含有率の積算値
図5 実験中のLF/HFの変化

SSQアンケートによる結果は合計点数であるTotalの数値が高いほど酔いが出たと判断が出来る材料になる。今回は、実験終了後に参加者にアンケート答えてもらっている。図6を見ると「なし」に比べて「マスク」の値は1/3倍の差が生まれ、「帽子」に関しては値は変わらなかった。また図7の変化の見落としについて追加質問をした結果をまとめると、「マスク」よりも「帽子」の方が値が低くなった。このことから「帽子」の方が参加者にとって気にならない、違和感を覚えないという結果を得れた。

図6 SSQアンケートの回答結果(Total)
図7 SSQアンケートの回答結果(追加質問)

以上のことからVR酔いを抑制するコックピット効果の発生には、視界の端に少しだけ見えるようなマスクでも発揮すると分かった。また今回マスクの色を白、帽子の色を黒としている。そして明度という面から見ると、黒よりも白のほうが高い。そのため明度という面で目立ってしまったことによってストレスを感じてしまい心電図の面で現れ、逆に明度が低い黒を用いたことにより変化の見落としという面で良い結果が得られたのではないかと考えた。

このことから色などに気をつけながら視界内にオブジェクトを配置することで、目立たずVR単体でVR酔いを抑制する結果を生み出すことが出来るかもしれないという結果を今回の実験で得ることが出来た。

作者プロフィール

渡邊 海斗

大阪電気通信大学 総合情報学部 情報学科 3年 ヒューマンインターフェース研究室 渡邊海斗です。

近年ではVRというコンテンツは様々な分野にて活用されています。しかしどうしてもVR酔いという症状が体験していると発生してしまいます。

そのため今回はVR酔いを軽減する方法を検証しました。また今回はVR単体で活用できるような研究を行いました。

これでVRゲームなどを作成する際に少しでも効果を発揮できれば幸いです。

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