大阪電気通信大学

原摩訶大将棋の定石と戦法に関する研究

はじめに

原摩訶大将棋とは平安時代に使用されていた平安京をモチーフとした将棋の原型のボードゲームである。通常の将棋とは駒数と勝敗方法が異なり、縦17列×横17行289マスの盤面で対局し総駒数180個もの駒を使って対局をする。

原摩訶大将棋の全体図

ただ、原摩訶大将棋は後に改訂によって縦17列×横17行の289マスの盤面から縦19列×横16行304マスの盤面に変更されている。そこでC列から右にある駒全てが右に一マス分、O列から左にある駒全てが左に一マス分詰められており、新たにできた列の間に歩兵、横飛、瓦将の三つの駒とDo/Moにある瞋猪が移動して形成されている。そうして総駒数192個になったものが摩訶大将棋である。また、駒が増えたことによって利いている駒がない四つのDf・Pf・Dk・Pkマスが生まれており、基本的にはこの四箇所を攻めていく流れになっている。

摩訶大将棋の全体図

共通ルールとして、相手の駒を取ったとしても今の将棋のように自分の手駒として使用することはできない。勝利条件は成り駒と呼ばれている狛犬・獅子・奔王・竜王・竜馬という五種類計七つの駒のうちいずれか一つが敵陣に侵入し、脱出した瞬間に相手に取られなければ勝利となっている。

また、当時では占いのための呪術のツールとしても使用していたようだ。

本研究について

原摩訶大将棋、摩訶大将棋は対局する以上戦略や基本の勝ち筋、初手の効率的な動きなどが存在するはずだが、現状ではほとんど戦術についての資料が存在しておらず、戦法の研究もあまり行われていない。従って独自で戦術を発見・検証しそれらをまとめ徹底的に分析することが研究の目的である。

狛犬と獅子の特徴

原摩訶大将棋/摩訶大将棋では最も特殊な動き方をする駒が二つある。それが狛犬と獅子である。狛犬は縦横斜め全方位の中から一列を選び、その列の一マスから三マスまでのどこかに他の駒を飛び越しつつ移動することができる。獅子は他の駒を飛び越しつつ一手で自身の周囲八マスに二回まで移動することができ、実質自身の周囲二十五マスどこにでもいくことができる。さらに他の駒には全くない最大の特徴を持つ。実は狛犬と獅子は他の駒のように移動しながら相手の駒を取ることはできないのだが、代わりに居食いという全く動かずに自分の移動範囲にある駒を取ることができる能力がある。それぞれ狛犬は最大三つまで、獅子は最大二個までの駒を同時に取ることができる。この居食いによって強い駒の対処法の一つである囮を使って相手を動かせて、動いた先にあらかじめ自分の駒を利かせて置いて討ち取る囮戦法が使えないため、狛犬/獅子を取ろうとした駒が居食いで返り討ちに遭い、状況をさらに悪化させるため狛犬/獅子の動きを止めるのがとても難しいのだ。

さらに狛犬は獅子より移動/居食いができるマスが一マス分多いため攻めることに使いやすく、原摩訶大将棋/摩訶大将棋の攻めにおいて最強の駒は狛犬とされている。

狛犬の移動範囲 
丸がある場所全てに移動でき、白丸にある駒は飛び越すことができる
獅子の移動範囲
丸がある場所全てに移動でき、白丸にある駒は飛び越すことができる

獅子を用いた新たな自陣防衛法『獅子跳び』

獅子は周囲八マスに二度動けることにより実質自身の周囲15マス分を居食いによってカバーできる。居食いによって一切動かずに相手の駒を取ることができるため、自陣の内部で居食い範囲が前線と重なる場所に配置できればたとえ数押しで攻めてきても居食いによってこちらの盤面の状況を変更せずにすべて返り討ちにできるのだ。このように自陣の中で居食いの範囲を自陣の前線と重なるように待機すれば、決して相手に取られない無敵の防衛陣を敷くことができるのだ。

原摩訶大将棋での動かし方

原摩訶大将棋では獅子をNnDnマスに持っていくと最大限効果を発揮する。まず獅子をNnDnどちらに動かすのかを決める。そしてNnに行きたいのならMmにある角行を、DnならEmの角行を斜め後ろに二マス分動かす。そうすれば獅子がNnDnにスムーズに移動できる道が完成するので獅子をKo→Mm→Nn(Go→Em→Dn)と移動させれば盤面が完成する。

Nnマスに獅子を移動させる場合の動き方
1.角行を二マス左斜め後ろに動かす
2.間を縫う様に獅子を三手かけてNnに移動させる。
3.完成した盤面図

摩訶大将棋での動かし方

摩訶大将棋では獅子をNmFmマスに持っていくと最大限効果を発揮する。まず盲熊を動かすと獅子が横に移動できる通り道ができる。その道を利用し獅子をLn→Nm(Hn→Fm)と移動させる。そうすれば自陣の最大の弱点であるDkかPkマスの歩兵と獅子の居食いの範囲が重なり、弱点を解消できる。

Nmマスに獅子を移動させる場合の動き方
1.盲熊を一マス左に動かす
2.間を縫う様に獅子を二手かけてNmに移動させる。
3.完成した盤面図

研究による成果

今までの原摩訶大将棋/摩訶大将棋では狛犬が攻めてくると特定の駒でしか対処が不可能であり即座に決着がついてしまっていた。しかし今回実戦的な戦法を編み出したことにより、狛犬が攻めてきても詰みにはならないような盤面を簡単に形成できるようになった。これによりただ狛犬が攻めるだけのゲーム性から脱却することができた。

作者プロフィール

菅原 拓真

大阪電気通信大学 総合情報学部 デジタルゲーム学科 四回生 計測ハードウェア研究室

原摩訶大将棋/摩訶大将棋歴は二年。主に戦法を研究しており、対局では研究室一腕に自信あり。

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